外用薬の上手な使い方

 

アトピー性皮膚炎では、ステロイド外用薬と免疫抑制外用薬(プロトピック)が治療の主役です。

どちらも、必要な量を、必要な期間、使い続けることが症状改善には不可欠です。

ここでは、上手な塗り薬の使い方を説明します。

 

1)部位ごとに適した薬剤があることを知る

例えばステロイド外用薬の場合、以下の図のように部位によって薬剤の吸収率が異なります。

 

ステロイド外用薬でも似たような傾向がみられますが、免疫抑制外用薬は皮膚の厚い手のひらや足の裏などでは特に吸収されにくく、効果が出にくいことがわかっています。

 

 

2)適切な量を塗る

①ステロイド外用剤・保湿剤

ステロイド外用薬や保湿剤では目安としてFTU(フィンガーチップユニット)を使います。軟膏の場合、FTUは大人の人差し指の一番先から第1関節に乗る量で、約0.5gに相当します(チューブの穴の直径が5mm程度の場合)。これを1FTUと呼び、大人の手のひら2枚分くらいの面積に塗ることができます(体表面積の約2%)。

ローションの場合は、1円玉大が1FTUとなります。

 

FTUを目安に、自己判断で増減せずに常に医師に指示された量を塗るようにしてください。

 

②免疫抑制外用剤(プロトピック)

免疫抑制外用薬は1回に塗る量の上限が決められています。

成人の場合は、0.1%112回、15gまでとなっています。

 

小児の場合は、0.03%小児用を112回、15gまで(年齢によって減量)となっています。

 

 年齢(体重)

    1回に塗る量の上限  

2歳~5(20kg未満)

1g

6歳~12(20kg以上50kg未満)

2g4g

13歳以上(50kg以上)

5g

 

免疫抑制外用薬をチューブから押し出したとき、0.5g5cm程度の長さになります。また、1cm(0.1g)10cm四方の面積に塗ることができます。なお、これらはあくまで目安であり、チューブを押し出す力や皮膚の状態などにより、1cmあたりのg(グラム)数や塗布範囲は変わりますのでご注意ください。

 

3)塗り方のコツ

・手をきれいに洗ってから塗ります。

(塗り終わった後の指先は拭く、洗うなどして薬剤が残らないようにしましょう。)

 ・ゴシゴシ強くすりこむと、皮膚を傷つけバリア機能を低下させることになります。

  やさしく塗り広げましょう。また、皮膚炎のある部位にだけ塗りましょう。

 ・ステロイド外用薬や免疫抑制外用薬とともに保湿剤を塗ることで乾燥を防ぎ、皮膚を

   保護することができます。

・手のひらや足の裏などの皮膚が厚い部位では、入浴直後の皮膚が柔らかくなっ

 

  ている時に塗ると薬の吸収が良くなり、効果的です。

 

 

アトピー性皮膚炎におけるプロアクティブ治療

 

主流になりつつあるプロアクティブ治療

アトピー性皮膚炎の外用療法には、症状が出たときに治療するリアクティブ治療と、症状の出る前から予防的に治療するプロアクティブ治療の2種類があります。再発の多いアトピー性皮膚炎の場合、リアクティブ治療ではうまくコントロールしにくいため、現在では、徐々にプロアクティブ治療が推奨されるようになってきました。

 

重症のときは外用薬を十分な範囲にしっかりと塗ります

皮膚症状が重症のときは、フィンガーチップユニットに従って十分量のステロイド外用薬・タクロリムス軟膏を塗る必要があります。たとえば、成人で全身に発疹があるときはステロイド外用薬1回20gの使用量で治療を開始します。かゆみが軽快し紅斑や苔癬化が軽快してきたら、隔日外用に移行します。

 

症状が軽快したあとも、外用の頻度を減らしながら治療を継続します

プロアクティブ治療で大事なことは、それまで炎症があったすべての部位、つまり症状がなくなった部位にも塗るのが鉄則です。使用量ですが、発疹は軽快しているわけですので、フィンガーチップユニットの1/2量か1/3量で大丈夫です。ですから、プロアクティブ治療では1回10g~7gで全身を覆うようにします。あらかじめ保湿薬を全身に塗っておくと、少ない量で全身にのばすことができます。このやり方で、隔日外用、週2回外用、週1回外用と減らしていきます。ステロイド外用薬を塗らない日はタクロリムス軟膏と保湿剤を塗るという方法も効果的です。タクロリムス軟膏がひりひりしたりほてったりする場合は、保湿剤だけの外用でも構いません。ステロイド外用薬をたくさん塗っているように感じるかもしれませんが、週1回外用であれば全身で1週間に10g~7gしか塗っていないことになり、しかもコントロールは良好ですので、非常に効率のいいことがわかると思います。個人差がありますが、1回5g以下で全身に薄く塗っても良好なコントロールを維持している人もいます。このようにステロイド外用間隔を徐々に開けていき、2週間に1回あるいは4週間に1回だけ、ステロイド外用薬を全身に5g塗るだけで良好にコントロールされている方もいます。

 

プロアクティブ治療中にも再発はあります

 

プロアクティブ治療で重要なことは、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を毎日外用して十分に良くなった後も隔日外用し、再発がなければ週2回外用、週1回外用と、ゆっくり減らしていくことです。もちろん途中で再発(再増悪)は起こります。その時はまたフィンガーチップユニットの使用量で十分に毎日外用します。プロアクティブ治療中の再発はすぐにコントロールできますので、隔日外用、週2回の外用にすぐに戻すことが可能です。なお、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を塗らない日でも、保湿薬の外用は毎日継続します。(図34